HAPAX12号「香港、ファシズム」

マーク・ダガン協会

HAPAX12号は2月末〜3月初めの予定である。ここ数年、HAPAXは年2回のペースで刊行してきたが、今回はそれよりやや間を置いた刊行となる。ここで予告したように12号はファシズムを主題とすることですすめられてきたが、その締め切り間際の10月下旬にメンバーの一部が香港を訪れ、その衝撃ゆえにこれを別な特集として組み込むこととなって特集名は「香港、ファシズム」となった。そのレポートはすでにここで掲載してきたが誌面に掲載することの意義は充分あるはずだ。とはいえ早い段階で寄稿、もしくはインタビューに応じていただいた諸氏にはこの場でお詫び申し上げる。/新たなファシズムの到来と香港など各地での蜂起は表裏をなしている。これが20世紀的なファシズムか革命かという状況と全く異なることはいうまでもない。いまたしかにいえるのは現在のすべては文明の崩壊をどう引き受けるかにかかわるということだ。気候変動はその端的なあらわれである。先にもここで書いたことだが、『植物の生の哲学』はここにあたって自然、そして環境そのものの概念を更新すべきであることを教える。「伝統的な地表の概念をこのように破壊することによって、通常のエコロジーの地平をも超越することができる。エコロジーはその起源からして、環境を常に、ひたすら生息域として、住まわせ受けいける地表として考察してきた」「大地が天体的な空間であり、天空の凝縮した一部分にすぎないと認識・意識するなら、『生息不可能な場所』が存在すること、空間は決して決定的なかたちで生息できる場所にはならないことがみとめられるだろう」。「生息域」をめぐる問いはいま、世界を席巻するコロナ・ウィルス、そしてフクシマがつきつけるものでもあり、たとえば赤坂憲雄の『ナウシカ考』が問う黙示でもあるだろう。スコットの『反穀物の人類史』があきらかにしたように穀物栽培のための奴隷化=定住こそ国家の起源なのだとしたら、物質代謝のような農耕をモデルにした自然概念ではこの崩壊をこえることはできない。旧来のエコロジーを継承する大地と人間の和解というホーリズム的モデルはいまこそ放棄されなければならない。気候変動をめぐる思考と実践は人間と自然を分裂性においてとらえ直すことから開始されるだろう。

人気の投稿