チアパスより――「われわれはどのようにグローバルな健康危機を体験しているか」

以下はLUNDIMATINで5月4日に掲載されたテクストのHAPAXによる訳である。


Covid-19 のような「世界的パンデミック」は何十億もの人々をひとつの共通の出来事(ウィルスの蔓延が人々に恐怖を引き起こし閉じ込めをせまる)に陥れる。これは人々が現在の状況を同じしかたで体験していることを意味しない。とはいえ、三月の初め以来フランスを震撼させている問題、すなわち(危機に直面し、ついで閉じ込めに直面した際の)不平等が問題となっているわけでもない。西洋から目を転じてみれば、別の現実が見つかる。さらに言えば、コロナウィルスは世界中いたるところに蔓延しているのだから、さまざまに異なった真実が明らかになる。そうした真実は、たとえばチアパスの叛徒によって発せられた。

[注記:本記事を公開してから、われわれはこの記事がサパティスタ民族解放軍の手によるものではないことを知らされた。スペイン語のオリジナル版が示唆している通りである。そうしたわけで記事の出所にかんしてはいくらか錯綜した事情がある。われわれとしては、これが明らかになるまで、記事は読まれる価値があると思われるので公開したままにしておく。しかし、読者にあってはこの点に細心の注意を払って読まれたい。]

 共同体の内部、つまりは都市の外では、状況はまったく異なっています。食料は菜園で自給しており、トウモロコシやフリホル(小豆や黒インゲン豆)の貯えもあるので、わたしたちは日々、振り出し薬を飲んで、農作業で身体に気を遣いつつ、小さな規模で家畜の世話をしています。
 パニックはそれほど重大ではありません。フェイクニュースや陰謀論や無能な政府の番組を眺めて一日を無駄にするほど暇ではないし、技術的な手段もありませんから。
 社会的諸関係は必要に応じた公正なものですが、連帯は知人にも見知らぬ人にも絶対的なものです。
 国家による援助にかんしては、なんの期待もしていません。国家がいまの土地を見捨てたために、わたしたちが土地を開拓することができたという歴史があるのです。
 子どもたちは学校もないので、自宅で家族と一緒に、それもとりわけ祖父母と一緒に、よりいっそうみずからの文化や言葉を学んでいます。
 家に居続けることはできないのだから、生活が中断することもありません。そんなことをすれば、動物たちが餓死してしまい、農地も荒れてしまいかねません。
 わたしたちは政治にかんして次のように考えるに至りました。近代資本主義の帰結としての都市は、危機が発生するたびにエリートたちを豊かにするために考案されたのだと。そして、それはもっとも弱い立場にあるひとたちを消し去り、恐れを抱き無気力になった全中流階級を自宅に閉じ込めて動かないようにするためであると。そのとき中流階級の人々は、ひたすらパニックにかんする情報を消費しては、いまが世界の終わりであるかのように貯め込んだ財産を遣うのです。
 世界の終わりは、資本主義の勝利とともに、わたしたちの惑星をささえる自然的要素やわたしたちの生を破壊する資本主義の複雑なシステムが勝利したときに始まったのです。
 わたしたちが体験しているのは健康危機だけではありません。気候危機、水不足、生態系の破壊による気候難民、中東の戦争やラテンアメリカの麻薬密売からの亡命者、こうしたことにも立ち会っているのです。大陸全土におけるフェミニサイドの数が指数的に増大していることや政府のあらゆる水準に恥知らずな汚職がなおも存在していることもわかっています。危機がシステムにしたがっているのだから、解決法も当然そうでなければなりません。
 手を洗ったりマスクをつけたりするだけでは十分ではありません。さまざまな別の世界の可能性を構築し、新たな方舟を考案しなければならないのです。
 勇気を持ってください。わたしたちは地球規模の崩壊を示す徴候のひとつに立ち会っている、そうした時代にあります。このウィルスはすでに人類と世界を蝕んでいる数多くのうちのひとつに過ぎないのです。
 食料をじぶんたちで栽培し、自己組織化し、自然医学を取り戻し、自立した学問を確立し、自由な小学校や中学校や多様性のある大学(pluriversités)をもっとたくさん設置すること。わたしたちは危機のなかにこそ亀裂を見いだし、集団的な生の様式について深く考えてみなければなりません。以上が叛徒たちの務めであり、その他の多くは民衆のアッセンブリーから生じることでしょう。
 わたしたちが叛徒としてなすべきは、下層の人々、田舎や山間部の人々とともに自己組織化し、現在の世界とはまったく異なったさまざまな世界を構築し、父権的な資本主義のウィルスとそれがもたらすあらゆる災い――パンデミック、天然資源の搾取、男性中心主義、植民地主義、差別、暴力、環境破壊、民族の文化的破壊、帝国主義、政党制――が入りこめないようにすることです。

愛を込めて #SombreroRojo

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