「HAPAX」13号「パンデミック」刊行

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「しかし危険があれば そこには生じるのだ/救う力も また」(ヘルダーリン)。コロナ禍は「危険」を開示しつつ、新たな次元の「危険」を開いた。この「危険」の深みを見ることなしに、ここからの「救い」はないい。この度刊行された「HAPAX」13号はこの危機の洞察と「救い」への試みである。ここに収録されたテクストの多くは半年前に準備されたが、諸般の事情によって刊行が遅れることになった。しかし(残念なことに)ここでの提起はすこしも古びることはなかった。このブログで多くの反響をえた「ウイルスの独白」、ビフォ、ヴァネーゲムらのテクストはいまなお生々しいし、そして「接触追跡アプリに関する二つのテクスト」は韓国からの李珍景氏からの寄稿とあわせて生政治と新たな次元を伝えるだろう。村澤氏、高祖氏からの論考はパンデミック状況が生と思考にどのような次元を開くかを啓示し、今号で最大のページ数をしめる江川隆男氏のインタビューは気候変動とコロナをいかに思考すべきかを示唆するとともに生成だけではなく消滅の実在性を思考することを要請する。江川が告げるように「絶対的難民」こそがわれわれの未来となるだろう。しかしこれは「危険」ではなく「救う力」であるはずだ。

 

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